「リストラティブヨガ」のリストラクティブ(restorative)とは、「元気を回復させる」という意味です。

その名前からもわかるように、たくさん種類があるヨガの中でも、もっとも「セラピー色が強い」とされます。高齢者や更年期障害など、ほかのヨガをあきらめていたような人にもおすすめできます。

1.リストラティブヨガの特徴

1-1.リストラティブヨガの目的

現代ヨガの多くはエアロビクスなどの影響を強く受けています。その結果、「筋肉を鍛える」、「カロリーを多く消費して、体脂肪を減らす」といったことを目的にしています。

リストラティブヨガはある意味、その正反対の位置にあるヨガです。ひたすらリラックス効果を追い求めています。筋肉や神経も刺激して回復させるのではなく、緩め・休ませることで本来のあるべき姿を取り戻します。

1-2.リストラティブヨガのアーサナの特徴

リストラクティブヨガのアーサナはほかのヨガとはかなり違っています。とるポーズの違いもあるのですが、それ以上に「補助具を多用する」というのに特徴があります。

この補助具は「プロップス」と呼ばれます。具体的には、ボルスター、ブロック、ブランケット(毛布)、ベルトなどです。 ボルスターとブロックは、ほとんどまくらやクッションのようなものを思い浮かべればいいでしょう。

これらがあることで、長時間同じ姿勢を保ち続けることができます。

また、リストラクティヨガのアーサナでとるポーズはほかのどんなヨガよりも長く、3 分~5分なら短い方で、10分から20分といったものも珍しくありません。それだけの時間リラックスしてポーズを保つためにも、プロップスは欠かせないのです。

2.リストラティブヨガの歴史

リストラティブヨガも、ハタヨガの一種です。といっても、ポーズをとり、体を動かすヨガはすべて、伝統的ハタヨガの流れをくんでいます。その意味での「ハタヨガの一種」ということです。

1990年代にアメリカの理学療法士ジュディス・ラサター(Judith Lasater)が始めました。ラサターはアイアンガーヨガの認定指導士でしたので、リストラクティブヨガとアンガーヨガには多くの共通点があります。

たとえば、プロップスを使うのもそのひとつです。また、どちらも身体のゆがみを直し、心身両方のリラックスを目的にしています。

とはいえ、よりセラピー色が強いのはリストラクティブヨガの方です。アーサナの多くは、ラサターが考案しています。

特に人気が高まったのは、2001年の「9.11アメリカ同時多発テロ」がきっかけでした。社会不安が高まるにつれ、個人としてもストレスを抱え精神的に不安定な人が増えました。そういった人たちのセラピーのために、多くのヨガスタジオがリストラティブヨガのクラスやレッスンを用意したのです。

今は日本でも多くのスタジオが対応しています。とはいえ、リストラティブヨガを専門にはせず、ほかの流派のヨガを同時に指導していることがほとんどです。インストラクターも同様に、いくつかマスターしている流派の中のひとつとして、リストラクティブヨガまでカバーしている形です。

3.リストラティブヨガの代表的なアーサナ

ほかの流派のヨガでもやるものも多いです。その体験者は同じ名前でもその内容の違いに驚くかもしれません。

どのアーサナでも、腕、脚、胴体の下にプロップスを置いて、そのポーズが維持できるように、各自で工夫しましょう。たとえば、空間ができ、放っておくと頭の重みなどでそちら方向へ痛みが出るぐらい曲がってしまうようなら、プロップスを置いて空間を埋めておきます。

・基本のリラクゼーションポーズ

マットの上で仰向けになります。脚は伸ばし、開きます。あくまで自然で楽なようにします。また、ボルスターを膝の下にかませておくと、腰への負担が減ります。

両腕も同様です。わきは卵が1個か2個入る程度に開けます。ひじは軽く伸ばし、手のひらは上向きにします。腕の安定が悪いようなら、ブランケットなどを敷いて調整します。

あとは15分から20分、全身の緊張を完全に解いて、静かに呼吸するだけです。

・こどものポーズ

まず、ほかの流派のヨガの場合の子どものポーズを頭に入れておきましょう。マットの上にひざまずきます。このとき、足の甲は下に向け、親指同士はくっつけます。

両膝を腰の幅ぐらいに開き、そこから体をおろしていきます。最後はおしりはかかとの上に載せ、両膝の間に胴体が入るようにします。腕は軽く後ろに流します。

これがリストラティブヨガになると、プロップスが使えます。膝の間にひとつ、さらにかかとの間にひとつボルスターを置き、胴体もお尻もその上に載せます。腕はひじを曲げて前に出し、ボルスターを半ば抱えるようにします。

この状態でやはり5分から20分、静かに呼吸します。苦しければ、顔は横に向けてもかまいません。

・仰向けの合せきポーズ

合せき(がっせき、合蹠)とは、足の裏同士を合わせた状態のことをいいます。

仰向けでこれをやると、自然とかかと、股関節、両膝でひし形ができるはずです。腕は軽く腰の横あたりに投げ出します。手のひらは上向きです。膝は無理にマットにつける必要はありません。

これの場合、背中や首の下にプロップスを置けば楽になるはずです。

・脚を上げるポーズ

仰向けで寝そべり、そこから脚を垂直に立てて伸ばします。腕は腰の横あたりに伸ばし、手のひらは下向きにします。

これもほかの流派であれば、自分の力でこの状態を維持します。ですが、そこはリストラティブヨガです。壁を使って、脚をもたれ掛けさせてOKです。また、背中や首の下などもプロップスを置きましょう。

とにかく、15~20分の時間をリラックスして過ごせる状態を見つけるのがコツです。また、そいしないとリストラティブヨガにはなりません。

4.リストラティブヨガと陰ヨガの違い

動きが激しく、流れるようにポーズを変えていくヨガを「陽ヨガ」といいます。中には大きくエアロビクスの影響を受けて、先生役の人の動きに合わせ、一斉に踊っているかのようなものまであります。現代のヨガはこの陽ヨガの全盛といっていいでしょう。

その一方で、全く反対にひとつのポーズをじっと保ったり、ゆっくりと体の可動域を試していき、呼吸も静かなヨガも求められるようになりました。リストラクティブヨガもその一種です。

→陰ヨガとは?効果ってどんなもの?ポーズを知って陰ヨガをマスターする!

これら激しい動きをしないヨガを全部まとめて、「陰ヨガ」と呼ぶことがあります。ですが、これには注意が必要です。「陰ヨガは陽ヨガの反対語ではなく、動きの静かなヨガの中の一種」と考えたほうが誤解が少ないでしょう。

リストラクティブヨガも厳密な意味での陰ヨガも、主な狙いが心身のリラックスにあることまで同じです。ですが、そのアプローチ方法は違います。

陰ヨガのアーサナは腱や筋などを伸ばすことで、効果を得ようとします。一方のリストラクティブヨガは狙いは筋肉です。この意味では陽ヨガとは代わりはありません。陽ヨガとの違いはといえば、「動かすことよりも休めるためのアーサナが基本」という点です。

5.リストラティブヨガのメリット

ここまでのお話でお分かりいただけているかと思いますが、リストラティブヨガの最大のメリットは「だれでもできる」です。セラピー効果が高いのです。

だからといって、ほかの面での健康や美容へのないわけではありません。時間を掛けているだけで、筋肉、関節、筋なども伸ばしていきます。全身の血液・リンパ液の巡りは良くなりますし、新陳代謝も高まります。ダイエット効果(痩身効果)も得られます。

半面、「もっと動きのあるものを。汗もしっかりかきたい」といった人にはもの足りないのも確かでしょう。ですが、そういった人たちも体調のよくないときもあれば、「今日はあまり激しいことはしたくない。気乗りがしない」「今はエクササイズ効果ではなく、何よりもリラックス効果が欲しい」といったときがあるかもしれません。その場合に備えて、一通りマスターしておいてもいいでしょう。

また、プロップスとして売っている商品を使う必要はありません。手元にあるクッションやまくら、布団、厚手の毛布などで代用すればOKです。

6.リストラティブヨガがおすすめの人

どんな人にもおすすめなのですが、高齢者もその例外ではありません。「体が硬い」は全く問題にはなりません。「激しい運動は息が上がる」もありません。慢性的な腰痛を抱えていても大丈夫です。

手術後のリハビリにも使えます。この場合、ピラティスでの体の機能の回復を考える人もいるかもしれません。ですが、より体に優しいのはこのリストラティブヨガです。

更年期障害、生理不順など女性特有のトラブルを抱えているときでも実行できますし、また、それらの緩和をしてくれます。

「マタニティーヨガ」などのコース名になっている場合にも、実際にやっているレッスン内容はリストラティブヨガであることも決して少なくありません。つまり、妊婦さんにもおすすめできます。