ヨガと格闘技の意外な関係があります。
ヒクソン・グレイシー選手が格闘技の厳しい世界の中で勝ち抜くために、取り入れたヨガの呼吸法が、火の呼吸です。
数あるヨガの呼吸法の中でも「最も力強いもの」といわれ、体の機能を高めていく効果があります。
火の呼吸とは
動画で確認
日の呼吸: 火の呼吸 – クンダリニー・ヨーガー
一心柔術アカデミー/Isshin Jiujitsu
女性でも健康法として火の呼吸を取り入れられる、動画です。
【準備】姿勢のポイント
・あぐらか正座でもOKです。しかし基本となるのは、あぐら座です。
左右のかかとが体の正面近くに来て、できるだけ股間に引き寄せます。
それぞれの足の甲は床に下ろしている状態です。もし可能なら、その足の甲を反対の脚の太ももに載せる蓮華座でもいいでしょう。
・お尻の左右にある骨(坐骨)に体重を載せ、背筋はしっかりと伸ばし、あごを引きます。
左右の腕は下ろし、手の甲をぞれぞれ左右のひざのあたりに置きます。手のひらは天井を向いた状態です。
・姿勢が決まったら、ヨガの基本的な呼吸をし、リラックスした状態を作ります。つまり、吸うのも吐くのも鼻からで、腹式呼吸を意識した深い呼吸です。
ここまでが準備です。
【実践】呼吸のやり方
・まずできるだけ息を吐き切り、そこから思いっきり息を吸います。お腹も膨らませ、吸えるだけ吸ったら、その状態を数十秒保ちます。
・勢いよく息を吐きます。やはり鼻からで、お腹がへこみきるまでやります。
・吐き切った反動で息を吸い、
後はこれを繰り返します。
1分に200回?!勢いとペースが重要!
シンプルにいえば、火の呼吸とは「ごくごく短時間に、勢いよく吐く・その反動を使って勢いよく吸う」の繰り返しです。
大事なのはこの「勢いよく」とペースです。
理想をいえば、1分間に200回で、1-5分続けます。1秒間に3回を超えることになります。いきなりは無理なので、最初は2秒に1回程度から始めましょう。
クンダリーニ(クンダリニー)ヨガとの関係は?
火の呼吸は元をたどれば、クンダリーニヨガのノウハウのひとつです。
クンダリーニヨガは、ミランダーカーさんなど有名人も実践しています。
この流派の指導者としてはヨギ・バジャン(1929~2004)が知られています。インドに生まれ育ったバジャンが1968年、アメリカにもたらし、それがきっかけとなってやがて世界中に広まることになります。
別名、気付きのヨガとも言われますが、第1~第7までのチャクラを開発して瞑想を深めていきます。
クンダリーニヨガは数ある流派の中でも、もっとも合理的でパワフルとされることが多いです。
ただ、日本では別の系統のヨガであるハタヨガ(アイアンガーヨガ、パワーヨガ、アシュタンガヨガなど)が全盛です。少しなじみが薄いのも確かで、最も特徴的である火の呼吸のほうが先に知られるようになっている状況です。
火の呼吸の効果はいろいろ!ダイエット(痩身)に効果ある?
激しさはあるものの、単純に呼吸を工夫するだけですが、火の呼吸にはさまざまな効果があります。
エクササイズ
まずエクササイズとしての効果があります。
素早く腹式呼吸を行うのは、有酸素運動の一種といえます。効率よく体脂肪をエネルギーとして消費されるでしょう。
代謝アップ
また、腹筋を中心に筋肉を強化することもできます。これは基礎代謝アップに直結します。
「その場で体脂肪が燃焼し、しかも太りにくい身体にもなる」ということですから、「スタイルをよくしたい」「体重を落としたい」という人にもおすすめです。
内臓強化
また、呼吸の激しい動きによって内蔵も刺激され、さらには血流もよくなります。これらの影響で自然と免疫力も高まります。病気にも強くなるでしょう。
集中力アップ
これら以外では集中力のアップも見逃せない効果です。
ヨガの効果はそれぞれが何重にも関連しあって、健康や美容にプラスになります。火の呼吸も例外ではありません。
ただし、心身ともに負担が大きいのも確かです。無理は禁物です。
火の呼吸とカパラバティ呼吸法の違いは??
火の呼吸の別名とされたり、やり方が違うとされたり、やや混乱気味なのがカパラバティ呼吸です。
「カパラバティ」を直訳すると「光る頭蓋骨」。カパラバティ呼吸も「頭がスッキリする呼吸方法」ぐらいの意味で理解しておけばいいでしょう。
「火の呼吸がクンダリーニヨガのノウハウのひとつであるのに対し、カパラバティ呼吸はハタヨガから発生している」とする人もいます。
ただ、紹介されているやり方を見ると、火の呼吸とほぼ変わりはないようです。やり方に違いがあっても、インストラクターごとの個人差程度のものです。
火の呼吸って危険なの?
脳への作用は?酸欠で危ない?
火の呼吸であってもカパラバティ呼吸であっても、我流でやるとトラブルもあるようです。特に酸欠には注意しましょう。
これだけ激しく呼吸をしているはずなのに、動きにばかり気を取られてしっかりと肺に空気を送り込むことができず、その一方で体内では酸素を大量に消費している場合があるのです。
吸うのも吐くのも鼻からというのが基本の型ですが、気がついたら口呼吸になっていたり、頭がぼうっとしてきたら危険信号です。
・脳にダメージを与える(脳にダメージが出てくる前に体の方で自然とストップをかけるはずですが)。
・ストレスになる(せっかくきつい思いをしても効果が得られなくて)
・自律神経を乱す
可能性があります
また、食後すぐや空腹時なども避けるようにしましょう。身体に無理がかかりすぎます。
我流は危険。インストラクターに学ぼう
なので火の呼吸を始める人は、最初はきちんとやり方をマスターしている人の指導を受けましょう。
ノウハウも正しいものが学べますし、異常があればインストラクターが気がついてくれます。そうすれば危険は全くありません。
なので、ヨガスタジオならどこでもいいわけではありません。クンダリーニヨガ専門のスタジオか、クンダリーニヨガをマスターしたインストラクターがいるスタジオを選ぶ必要があります。
丹田呼吸に似ている?
火の呼吸・カパラバティ呼吸だけではなく、激しい動きで体の機能を高める呼吸方法はほかにもあります。
・丹田呼吸、
・バストリカ呼吸、
・シータリー呼吸、
・マントラ呼吸、
などが比較的知られています。
火の呼吸と特に似ているのは、丹田呼吸です。腹筋を特に意識し激しく動かすのが最大の特徴でしょう。また、ほかのものはヨガから発生しているのに対し、丹田呼吸は仏教の修行、または健康法のひとつとして発展してきました。
たくさんある呼吸方法の優劣を決めるのは難しく、一長一短といったところです。まずは興味が持てるものから実践してみましょう。
船木選手も実践していた!
火の呼吸といえば、格闘家のヒクソン・グレイシー選手が有名ですが、日本の格闘家の船木誠勝選手も実践しています。
※
ヒクソン・グレイシー自身は「火の呼吸」とは呼んでいないようです。やり方を見ると、火の呼吸に近いものですが。
船木誠勝選手は、火の呼吸を採り入れ、またクンダリーニヨガも実践しています。
船木さんはヨガを使ったトレーニング方法にかんする著書もたくさんあるので、肉体改造に興味のある人は目を通しておくのもいいでしょう。
本で学ぶなら
先にも申し上げたように、火の呼吸は最初は指導者を見つけ、そのもとでやるのが原則です。それでも「知識を付けたい」「まね程度でもいいから自分でも始めてみたい」という人もいるでしょう。
教科書代わりにするものとしては、『火の呼吸!』(KTC中央出版)がおすすめです。著者の小山一夫さんは日本で初めて火の呼吸を紹介した人として知られています。
ほかにも
といった著書があります。
まとめ
火の呼吸法は、最初は指導者についたほうがいいですが、一度マスターすれば、これほど手軽なトレーニング方法・健康法はほかにはないでしょう。
場所は座る分だけあればOKです。道具も不要です。
もちろん、すでにヨガに親しんでいる人が採り入れるのもいいでしょう。
火の呼吸の効果の高さを実感したら、ヨガのアーサナ(ポーズ)にも取り入れてみると、より効果的です。
火の呼吸も本来はヨガのノウハウの一つなので、両方やることで相乗効果があります。