ヨガはポーズを取っているときは、基本的に吸うのも吐くのも鼻からです(鼻呼吸)。
また、ウジャイ呼吸、 カパラバティ呼吸のようにその呼吸自体が体の調子を整え、鍛えるものもあります。
こうした訓練になるような呼吸法の中でも特に内臓にたまった毒素を排出する効果の高いのが、ナウリです。
タレントで俳優の片岡鶴太郎さんがテレビで披露しところ、大きな話題になり、いっぺんにナウリの名前が知られるようになりました。
ナウリ呼吸法とは
「ナウリ呼吸法」とも呼ぶけれど、ナウリは呼吸法ではない?
ナウリでは激しくお腹の筋肉を動かします。このときに呼吸を止めた状態で行います。そのため、「呼吸法ではない」と紹介されることもあります。
しかし、呼吸の扱い方が大きなカギを握っているのは確かです。
参考
ナウリの効果
内臓の浄化法。古代インド式ヨガから伝わるナウリ
ナウリを実行しているときは、お腹の筋肉がまるでそれ自体が生き物のように動き回ります。お腹の中にある内臓も大きく動き、活性化します。
この作用で、内臓にたまった毒素が一気に浄化されます。つまり、「お腹のデトックス効果」を強力に発揮してくれるのがナウリです。
今、日本で行われているヨガの多くは、いったんアメリカに渡り、そこでエアロビクスなどフィットネス系のエクササイズの影響を受けたものです。
しかし、ナウリは「古代インドで始まったヨガのスタイルをそのまま受け継いでいる」とされます。そのため、すでにヨガになじんでいるつもりの人でも、かなり目新しさを感じるでしょう。
ヨガのナウリのやり方。実践のコツ
動画
【ヨーガ(yoga)】ナウリ(nauli)
実演:佐藤源彦氏
バンダ
ナウリを実行する前に必ず必要になるのが、バンダです。
日本語では「止息」と訳されることがあり、確かに息を止める動作が伴います。しかし、もともとのサンスクリト語では「締め付ける」ぐらいの意味です。
バンダにもいくつか種類があり、ナウリをやるのに必要なのはウディーヤーナバンダです。これがきちんとできないと、ナウリに進むこともできません。
ウディーヤーナバンダは横隔膜の使い方がポイント
ウディーヤーナバンダが目指す状態は、特におへそのあたりのおかなを引っ込めます。
気持ちとしては、ほとんど背中の皮にくっつけるぐらいの感じです。こうすると、同時に横隔膜も引き上げられるような感覚になるでしょう。
このウディーヤーナバンダをやるだけでも、便秘・消化不良といった胃腸の不調を改善し、また、自律神経のバランスも整えることができます。また、集中力も養えるので、精神的にも安定するでしょう。
ナウリで腹筋を自在に動かす
ここからようやく腹筋を動かすナウリへと進みます。
まず、ウディーヤーナバンダをやれば腹直筋がおへそを挟んでタテに2本現れるはずです。よく、腹筋を鍛えている人には「シックスパッド」とよばれる6つの筋肉ができますが、これらを3つずつ左右に分けたものと考えていいでしょう。
ウディーヤーナバンダの状態でもすでに腹部に力が入っていますが、さらに力を入れてしっかりと腹直筋が盛り上がるようにします。
最初はここまでで十分です。
慣れてきたら順番に次のことに挑戦してみましょう。
① 腹直筋のだけを盛り上げ、お腹にあるほかの筋肉は緩める。
② 左右2本の腹直筋を右側に寄せ、そこで3、4秒キープしてから中央に戻す。左右を入れ替えて、同じことを繰り返す。
③ 中央から右に寄せた腹直筋を今度は直接左に寄せる。また、左に寄せてから右に直接寄せる。
④ 次第にこのスピードを上げる。また、筋肉が回転しているかのようにスムーズに動かす。
ナウリの練習の上手いコツ
ナウリができるようになる前に、初めにつまづきやすいのが、ウディーヤーナバンダです。
まずは、これを集中的に練習しましょう。
1.両足を肩幅より広げて立ちます。
2.ヒザは軽く曲げ、上半身を前屈します。
3.ヒジを伸ばした状態で両手をヒザに当て、腕で上半身を支えます。アゴを引き、目線はお経をへと向けます。
4.この状態で、思い切りお腹を凹ませます。ただし、単に凹ませるというよりも、お腹を横隔膜などの中の方へと引き込むような感じのほうがうまく行くでしょう。
これに慣れてくると、ほかの姿勢でもナウリができるようになります。
ナウリ呼吸は危険なの?やめたほうがいい人は?
ナウリ呼吸は激しい動きなので、初心者や体調が悪い人はやめたほうがいいでしょう。
また、食事の後や、循環器系にトラブルのある人、喘息・頭痛などがある人、妊娠の可能性のある人などもやめておくようにしましょう。
また、我流でやると、腹筋を痛めたり、内臓にダメージを与えたりします。最初は必ずインストラクターの指導を受けながらやるようにしましょう。
ナウリは難易度が高い?
もちろん、簡単にはできません。ヨガの中でも中級・上級者向けというのは、見ただけでもわかります。「究極のヨガ」という別名もあるぐらいです。
そもそも、腹直筋がある程度発達していないと、腹直筋をふくらませることもできません。
しかし、そこから次はコツがつかめるかどうかです。しばらく練習してコツがつかめれば、左右に動かすなど腹直筋をコントロールできるようになるでしょう。
女性がやってもいいの?
女性がやってもいいかどうかは意見が分かれます。
インストラクターの中には、「女性はやめておいたほうがいい。特にこれから出産を控えている人にはおすすめできない」という人もいます。
「内臓を傷める、特に子宮への影響が心配だ」というのが理由です。
その一方で、
内臓の活動を盛んにし、骨盤周りの筋肉や腱を鍛えることもできます。体の歪みの矯正にもなります。女性の多くの人が悩んでいる便秘の解消にも役立ちます。
あとは自己責任で判断しましょう。
ひとつの目安として、「いくらやっても慣れない」「苦痛を感じるし、実際に痛みもある」という場合はやめておきましょう。「心地よい」と感じるのなら、続けてもいいかもしれません。
ナウリができないときは?
ナウリができない場合、理由は主にふたつ考えられます。
①前提となっているウディーヤーナバンダの段階でストップしてしまう、パターンです。
もうひとつは、
②ウディーヤーナバンダはクリアできるけども、腹直筋が動かせない、というパターンです。
どちらも、急にできるものではありません。
特に初心者はいきなりこれらを始めるのではなく、先に初歩のヨガをマスターしましょう。
また、取り組むことができるようになっても、一気にできるようになるとは思わないほうがいいでしょう。それだけ難易度が高く、じっくりマスターすべきものだからです。
だからといって、焦る必要はありません。
他のヨガのアーサナにも共通する点ですが、完全にはできなくても健康や美容にしっかり効果はあります。完璧にできたらより効果が高くなるというだけの違いです。
また、繰り返しになりますが、我流でやるのはやめておきましょう。上達が遅くなるばかりか、内臓などを傷める結果にもなりかねません。
まとめ
ヨガの目指すもののひとつに、「自分の肉体や心を自在に動かす・支配すること」があります。
ナウリはその目指す理想の境地のひとつでしょう。肉体への効果は高く、見た目にもインパクトがあります。できるようになれば満足感も高いでしょう。
しかし、ナウリができるようになる前にクリアしなければいけないヨガのステップはたくさんあります。まずはひとつひとつヨガの技術を身につけて、焦らずにナウリへ挑戦するようにしましょう。