この場合の魚とは、魚一般ではありません。ヒンドゥー教では最高神とされることも多いヴィシュヌが、魚に姿を変えたものとされます。世界が大洪水に襲われたときに、選ばれた人たち数人と地上のすべての植物の種を乗せた船を引っ張り、安全なところにまで運びました。

絵や彫刻で描かれるときは、魚の口のあたりから人間の上半身が出てきているような姿のことが多いです。

とはいえ、ポーズを取ったときの見た目は魚をイメージさせます。比較的シンプルなアーサナながら、多くの効果があることでも人気があります。仰向けでやるポーズの代表といってもいいでしょう。

魚のポーズの効果・効能

背骨

魚のポーズを取ると、まず背骨や首の骨がしっかりと伸びます。肋骨も左右に大きく開きます。これらのことから、もちろん背骨の柔軟性アップを期待していいでしょう。しかし、ほかのポーズにはない、たくさんの効果があります!

甲状腺

魚のポーズで最も特徴的なのは、甲状腺への働きかけが大きい点です。喉仏の下あたりにあり、甲状腺ホルモンが分泌しています。

このホルモンの役割としては、体温の調節、脳の活性化、心臓や胃腸などの内臓の活性化、新陳代謝の促進などなど、どのひとつをとっても少しの異常でも健康を大きく損ねるものばかりです。

甲状腺ホルモンの分泌量は多すぎても少なすぎてもいけません。量に問題があると、動悸・息切れといった呼吸器のトラブル、記憶力・集中力の低下、月経不順・停止、乾燥肌、のぼせ・冷え、発汗、不眠などなどさまざまな症状が出ます。免疫力も低下し、そうなると感染症などを招いてしまいます。

また、「体の調子がよくない。医者にみてもらったけども原因が見つからない。なにをやっても改善しない」といったときに、あとから甲状腺ホルモンのトラブルが見つかることが少なくありません。甲状腺のトラブルはかなり厄介なのです。

この甲状腺そのものも刺激し、周囲の筋肉や腱の柔軟性を増すことで甲状腺に出入りする血液やリンパを増やすことができるのが、魚のポーズなのです。

つまり、効果としては記憶力・集中力をアップさせ、生理のトラブルを解消し、肌もきれいにし、病気にかかりにくい体を作る、ということになります。

上半身

また、特に上半身をほとんど残さずに刺激するので、肩こり解消、バストアップ、小顔、リフレッシュなどにもつながるでしょう。肋骨を広げることで、心臓の近くにあるチャクラも活性化させることができます。これはリラックスにつながります。

魚のポーズのやり方

魚のポーズは高い効果が期待できるだけに、多くのヨガの流派が採り入れています。それぞれに工夫があり、教室やインストラクターごとにちょっとずつやり方も異なります。そのうちのひとつで、比較的オーソドックスなやり方をご紹介しましょう。

・両足をそろえて仰向けになる。つま先はまっすぐに天井へと向ける。手のひらで床を押さえるような感じで両腕を体の横につけて伸ばす。
・ヒジは伸ばしたまま腕を横にスライドさせ、おしりの下に入れる。手の甲におしりを完全に載せる。
・胸を突き上げることで、背中をエビ反りにし床から離す。お尻はしりにつけたまま。首も曲げて、頭頂だけが床についている状態にする。
・この状態を維持して、息を吸って吐いてを数回繰り返す。時間にして30秒程度。
・首などに負担がかからないように気をつけながら、背中をゆっくりと下ろす。

胸を突き上げるときは、腕ではなく背中や首の力で行うのが理想です。しかし、無理な場合は肘で重みを支え腕の力も使うようにしましょう。

魚のポーズのバリエーション

座った状態で始める

床に仰向けに寝るのではなく、上半身を立てて座った状態から始める方法もあります。

・手のひらは床に置いて、指先は真っすぐに前を向けます。流派によって手をおしりの下に入れるところと、おしりの横に置くところがあります。
・ヒジを曲げながら上半身を倒していきます。腕によりかかるような感じです。
・最後はやはり首を曲げて頭のてっぺんを床につけます。
・息を吸う・吐くを数回繰り返し、30秒ほどキープします。

蓮華座をプラス

これは足の形だけが変わります。床の上に仰向けになるときに、左足の甲を右足の太ももの上、右足の甲を左足の上に乗せて組む、蓮華座を作ります。

あとの一連の動作は同じです。ただし、足の左右は入れ替えて、偏りが出ないように繰り返します。

魚のポーズ できない場合は?

初心者なら、腕の力を使ってもうまく胸が持ち上がらないことも珍しくないでしょう。その場合は、プロップスと呼ばれる補助具を使いましょう。

もし、用意できるのなら、プロップスの中でもブロックと呼ばれるレンガぐらいの大きさのものが2個あればいいでしょう。それでも苦しい場合は、そのサイズを上げていきます。スタジオでのレッスンではなく、自宅の場合は、座布団や枕などでもOKです。

床に仰向けになる前に、肩甲骨が来る場所に1個、頭が来るところに残りの1個を置きます。この上に上半身を置いてから、腕をおしりの下に入れ、あとは通常の形と同じです。もし苦しいようなら、ヒザを曲げてもいいでしょう。

また、てっぺんを床につけて頭を支えるのが難しい人は、できるだけ首を伸ばすことで負担が少なくなります。とはいえ、それでも難しい人は、やはり無理をせずに、頭の下にプロップスを置くようにしたほうがいいでしょう。

魚のポーズ 吐き気がする?

どんなポーズでも慣れない人がやると、気分が悪くなることがあるものです。特に魚のポーズでは吐き気やめまいがする人が少なくありません。「乗り物酔いのような感じ」と表現する人もいます。頭を普段しないような向きにするので、耳の中の三半規管が異常を感じているのかもしれません。

こういった場合は、しばらく楽な姿勢を取って深く静かに呼吸を繰り返しましょう。いったん心身をリラックスさせるのです。再び魚のポーズを取るときも呼吸が浅くなっていないか注意します。

ほとんどの人はこれで解決するようです。それでもダメなら、その日はあきらめるか、プロップスを十分に使って楽にポーズを取れるようにしたほうがいいでしょう。

まとめ

魚のポーズは普段はしない姿勢で、しかも首にはある程度の負担もかかります。特に女性の場合、少しやってみて怖くなる人もいるようです。

そういった場合は、いきなり魚のポーズを始めるのではなく、準備をしてからにしましょう。ポイントになるのが胸のそらし方です。「壁を背中にしてイスに座って、頭を後に反らせ、最後は壁に押し付ける」といったことでも練習できます。