ピラティスはしばしば、ヨガの一種のように扱われます。たしかに、ヨガスタジオでさまざまなヨガの流派と一緒に、ピラティスのレッスンが組み込まれていることも珍しくありません。また、インストラクターの多くがヨガから始めて、ピラティスにまでカバーするようになっています。しかし、同じものではありません。
ピラティスとは
ピラティス(ピラティスメソッド)はしばしば、ヨガの一種のように扱われます。たしかに、ヨガスタジオでさまざまなヨガの流派と一緒に、ピラティスのレッスンが組み込まれていることも珍しくありません。また、インストラクターの多くがヨガから始めて、ピラティスにまでカバーするようになっています。しかし、同じものではありません。
リハビリから始まったが、今では美容や健康にも
ピラティスが始まったのは、第一次世界大戦中、またはその直後です。もともとは負傷した兵士のためのリハビリプログラムでした。考案者はドイツ人看護師のジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスで、その名前を取って「ピラティス」と呼ばれるようになりました。
ジョセフは1926年にアメリカに渡り、1977年に亡くなりました。この間、ジョセフはプログラムを改良し続けました。
今ではリハビリだけではなく、トレーニング方法として、または美容や健康のためのフィットネスとしてもおなじみのものになっています。もともとがリハビリのための考案されたものなので、身体に無理をすることがなく、だれにでも実践できるのが人気の理由の一つです。
また、アスリートらまでもがエクササイズと体のメンテナンス、運動能力の改善などを兼ねてピラティスを実践しています。ゴルフのタイガー・ウッズがその代表でしょう。
ピラティスにも種類がある
ジョセフはリハビリプログラムを作る際に、ヨガも参考にしました。ヨガと共通する部分が多いのはそのためです。しかし、はっきりとした違いもいくつもあります。もともとインドの修行者のためのものであったヨガの場合、瞑想など哲学的な要素が色濃く残っています。しかし、ピラティスにはその要素は全くありません。
また、ヨガの場合使う道具はプロップスぐらいです。これはうまくポーズが取れないときに、それを補助するためのクッション類です。一方、ピラティスの場合は本格的なマシン類も積極的に使います。本格的にマシン類をそろえたピラティスのスタジオは、一見スポーツジムにも見えるぐらいです。とはいえ、ほとんど器具類がなくてもできることも多く、効果が得られるのもピラティスの特徴です。
マットピラティス
まず、必要なのはマットです。このマットは「ピラティスマット」と呼ばれることもあるものの、実際には「ヨガマット」と同じものと考えていいでしょう。広さは畳1枚分もないぐらいです。マットピラティスを実践するには、そのマットの広さに少し余裕がある程度ですみます。
ヨガを始めるかピラティスを始めるかと迷ったような、ピラティス初心者におすすめです。ピラティスの基本的な呼吸方法や動きを学ぶことができます。ポーズはヨガに似通っていて、特に横たわったまま行う寝ヨガに近いものになります。多くの場合、そのポーズを流れるように次々と変えていきます。集中力を高める効果もあります。とはいえ、やはりインナーマッスルを鍛えることを最も大きな目的にしています。インナーマッスルは体の奥底にある大きな筋肉で、これを鍛えることにより、姿勢が正しくなり、血流をよくする・やせやすい体質にするなどの効果があります。
マシンピラティス
その名前の通り、マシンを使ったピラティスです。マシンといっても動力などはなく、ほとんどスポーツジムに置いてあるものと変わりがないように見えるでしょう。ただ、スポーツジムのマシンの多くが、負荷を掛けるのにウエート(おもり)を使うのに対し、ピラティス用のものはスプリングです。また、構造も比較的単純です。もともとがリハビリのために開発されたものなので、もちろん関節や筋肉への負担は大きくはありません。代表的なものに、Reformer(リフォーマー)、Cadillac(キャディラック)、Chair(チェアー)、Barrel(バレル)などがあります。
たとえばチェアーはそのまま日本語にすればイスです。これで踏み台昇降のような動きをしたり、または腹ばいになって上半身や腕を鍛えるような使い方もします。どのマシンも負荷を掛けたりバランスを取ったりといった様々な使い方をすることで、体のいたるところを鍛え、調整することができるようになっています。
どちらかといえば全身ではなく、手足や腰など体の部分に焦点を当ててメニューを進めます。これはどのマシンにも共通する使い方といっていいでしょう。
ホットピラティス
一部の大手ヨガスタジオでは、ホットピラティスのレッスンを用意するところも出てきました。簡単にいえば、「ホットヨガのピラティス版」です。
スタジオによっていくらかの違いはあります。多くのところが室温は30度台後半、湿度は60度かそれ以上の環境で行います。こうすることで、そのままでも体は軟らかくなり、汗もかきやすくなります。いつもなら取れないようなポーズも取れ、デトックス効果も高まります。その半面、「日常とスタジオ内の温度の変化に体がついていかず、体調を崩すことがある」「ストレッチ効果が高すぎて無理をしすぎてしまい、筋肉や腱を痛めてしまうこともある」といったデメリットもあります。「ホットが向いてるかどうかは人によって異なる」と考えていたほうがいいでしょう。
ホットヨガとホットピラティスの違いは、通常のヨガとピラティスの違いと同じです。ヨガが「主な呼吸は腹式。瞑想などをすることでの精神面への効果も期待されることが多い」のに対し、ピラティスは「主な呼吸は胸式。瞑想などはない。期待される効果はどちらかといえば体の機能面へのものに限られる」といった特徴があります。
これに加え、「ヨガはほとんど器具は使わないが、ピラティスは多用する」というものあります。ただし、ホットでやる場合は、ピラティスもマットピラティスが中心です。器具を使うことはまずはありません。
自宅でできるピラティスはどれ?
マットピラティスなら、自宅で実践することもできるでしょう。なにしろ、ほんの少しの広さがあれば、あと必要なのはピラティスマットぐらいです。ただし、いつも自宅でばかり行うのはあまりおすすめできません。特に初心者はそうです。
というのは、ピラティスは正しい動作をしないと効果は半減します。自分ではチェックできないでしょう。やはりスタジオに通ってインストラクターの指導を受ける必要があります。とはいえ、頻繁に通うのも現実的ではありません。定期的にスタジオに通い、残りの日は自宅で自分でもやってみるのがおすすめです。
動画
ピラティスでお腹周りの脂肪を落とす方法とは。
ピラティスとは -スタジオアズール-
ピラティスの効果
体幹(インナーマッスル)強化で太りにくい体になる
ピラティスの動作が狙っている効果の多くが、インナーマッスルの強化です。たとえば骨盤の周りなら、腸腰筋がその代表で、背骨・腰骨・大腿骨などをつないでいます。よく「体幹を鍛える」といった言い方もしますが、これは「インナーマッスルの強化」と同じ意味と考えていいでしょう。
「鍛える」とか「強化する」といっても筋肉を太くするだけではありません。柔軟性も向上させます。そうすることで、姿勢が正しくなります。ピラティスの効果とされるものの多くはここから波及したものです。姿勢が正しくなると、内臓の位置も本来ある場所に戻ります。変形したり圧力が加わったりしないので、その中を流れる血液やリンパ液もスムーズになります。
筋肉の柔軟性が増す
また、筋肉の柔軟性が増すこと自体も、その中にある血管の質を上げます。この面からも血液やリンパの流れを改善します。
体中の細胞に栄養素がきっちりと届けられるようになり、細胞活動の結果出来た老廃物もすぐに運び去られます。細胞が元気になるので、消費カロリーは増え、ターンオーバー(新陳代謝)も進みます。その結果、太りにくい体質になり、お肌などの細胞も常に新しいものに置き換わることになります。ダイエット(痩身)効果があり、美容にも役立つのはこのためです。
ピラティスのやり方
ピラティス初心者の注意点
ピラティス初心者はできればインストラクターの指導を受ける
ピラティスを解説した本も増えました。しかし、それよりは実際に動きを見せてくれるDVDの方がいいでしょう。さらには、実際にスタジオに通ってインストラクターの指導を受けるようにしましょう。というのは、ピラティスで効果を出すには正確な動きが必要です。呼吸法にしてもヨガの多くの流派では腹式呼吸が基本です。一方、ピラティスは胸式呼吸です。こうったことを理解せずにやる我流ではどうしても限界があります。
また、スタジオ選びには、次のようなことをチェックしたほうがいいでしょう。
1.ベテランのインストラクターがいる。ピラティスの団体があって、そこから出された資格を持っているインストラクターもいるが、あくまで参考のひとつ。
2.リフォーマーなどの器具がそろっている。器具があることは、それだけそのスタジオが本気でピラティスに取り組んでいる証拠。
もちろん、「ちょっとかじってみたい」という程度なら、ヨガがメインでピラティスのレッスンもついでにやっているようなところでもいいでしょう。しかし、これから本格的に始めるのなら、先に挙げたようなポイントをチェックしましょう。また、ヨガでも一緒ですが、契約前には体験レッスンを受けるようにしましょう。実際にスタジオに入り、自分でもやってみないことには気に入るかどうかどうかがわかりません。
ピラティスのポーズって?
ピラティスにはヨガのようなポーズ名はない
ヨガの場合は、「牛面のポーズ」「鳩のポーズ」「バッタのポーズ」などインパクトのある名前が使われています。一方、ピラティスの場合はこういったものはありません。というのは、次から次へと姿勢を変えていき、また、その人それぞれに必要なことをやります。名前があったところで、いちいち意識しているような間はありません。ただし、「ニュートラルポジション」や「インプリントポジション」と呼ばれる基本姿勢があるにはあります。しかし、これらはポーズとポーズの間にとり、次の動きのための準備といったところです。ヨガとは意味合いが異なります。
まとめ
ピラティスを始めるときに、どうしても気になるのは、「ヨガとどっちにしよう」でしょう。ピラティスを選ぶ、または「ピラティスにしてよかった」ということで多い理由は次のようなものでしょう。
「瞑想や精神のコントロールといったような哲学めいたものがくっついていないのがいい」「動きの理由にはいずれも医学上の理由がついていて、ヨガよりも科学的に思える」
一方、「ヨガのほうがよかった」とする人が挙げる理由は、「どちらでも心身が安定することは同じだが、精神面でのリラックス効果はヨガのほうが高いように思う」がその代表でしょう。
とはいえ、それぞれ目的の違いもあれば、感じ方の違いもあります。あまり深く考えないで、とりあえず両方経験してみるのもひとつの方法です。幸い、ヨガもピラティスも格安での体験レッスンが多くのスタジオで用意されています。